ぶどうの木は、ひとが育つ・ひとを育てる・ひとと育ちあう。
そんな生き方を応援します!

令和2年度 保育テーマ

子どもの自分づくりの育ちを支えるために

“自ら育つ”を信じて待つ!

自己と他者を信頼して賢く生きるひとになる

「クルードさんちのはじめて冒険」というアニメの映画を紹介します。

舞台は原始時代。クルード一家は父親の“外に出てはいけない”という掟を守り、ほとんど外には出ず、食べ物を得る以外は洞窟で暮らしていました。しかしある時、突然、大規模な地殻変動が起って噴火がはじまります。そのために、あたりは噴煙やマグマが噴出し大地は揺れて裂けていきます。ついに一家が暮らしていた洞窟も崩壊してしまいます。その時に、一家はガイという青年と出会います。初めて外の世界に放り出されて戸惑う父親は別の洞窟を探すことで家族を守ろうします。しかし、ガイはあらたな居場所を求めて、彼方にそびえる山のふもとをめざそうと提案します。ガイの説得もあり、一家は不思議なジャングル、変わった動物たちとの出会いなど未知の世界に圧倒されながらも、はじめての未知への冒険に踏み出すのです。
ガイは火を起こす技術を知っており、火を使って危険から身を守ったり、料理に活用したりします。

いばらの道も靴を履くことで乗り越えていきます。そして、山の頂の向こうに輝く太陽の光に希望を託すことを語ります。一家はカイの存在に勇気づけられていきますが、父親は急激な変化になかなかついていけません。ガイに生き残るためには考えることが必要と諭されますが、自分には腕力しかないと悟ります。噴火が激しくなり危機が迫る中、大地が広く深く裂けているために一家は立ち往生します。その時に、父親は持ち前の腕力を使って、家族一人ひとりを大地の裂け目の安全な向こう岸に投げ送ります。
取り残された父親は自分の身を守るために、ガイに諭された考えることを必死に自分に課します。そして、この困難を切り抜ける方法を見つけて、無事家族と合流することができるのです。
こうしてクルードさんちは、再び希望の地をめざして冒険をつづけて・・・

このファミリーアドベンチャー作品から、危機的状況のなかでも否応なく生き残っていくためには、希望を持つことが困難に立ち向かうエネルギーになること、考えることが困難の先にある扉を開く力になることを教えられました。この作品は、今日の現状と課題に置き換えても、示唆に富む内容があると思いませんか?私たち人類は原始の時代とは比較にならないほど、文明は進んでおり著しい科学の進歩がある一方で、地球の環境を破壊して異常気象などを引き起こしたり、グローバリズムの進行で世界は国境を越えてつながりあいながら、他方では分断や格差の問題を抱えています。

そして、いままさに私たち人類は、世界を覆いつくす新型コロナウイルス感染拡大という危機に直面しています。こうした私たちの予測を超えた課題が噴出する激動の時代にあって、これからの未来を支え託していく子どもたちがどのようなひととして育って欲しいのか、答えは自明のことに思えます。私たちは保育という営みを通して、一人ひとりの子どもを「自己と他者を信頼して賢く生きる人」に育てなければいけません。

クルードさんちの父親のように、外界は危険にあふれているからと洞窟に閉じこもることで子どもたちを守ることだけでいいのでしょうか?
自ら希望を切り拓き、ひとと共生し、社会に役に立つひとに育てるためには、私たち大人は子どもが不安になること、つらいことと向き合うこと、時にはいやな気持になることを、先取りして消してしまうことをしてはいけません。子どもが味わう負の感情を恐れていけません。

子どもは“したい”自分と“できない”自分とに引き裂かれて葛藤します。自分がしたいことと友達もしたいことがぶつかり、許せず折り合えずに葛藤します。
自分の力で乗り越える課題の前で、やれるだろうかと不安になりたじろぎながら葛藤します。その向こうに子どもが希望や目的を描き、負の感情に耐えながら自分で乗り越えた時に、できないことができる自分を発見したり、その先の新しい経験の世界がひろがるなかで、自己達成感や自己充足感といった喜びを素直に実感することができます。そのとき子どもは自分がぐっと成長している手ごたえを得て、こころの中に自己効力感や自尊感情が育まれます。

こうして子どもは自分づくりの物語を生きていくことで“自ら育つ”という主体としての「私」が形作られていくのです。
子どもが自分のしたいことを選択し決定すること、子どもが困難と直面した時には、問題を解決して乗り越えていく課題は子ども自身のものです。私たち大人は、子どもがかわいそうだと思い、つらいことをさせたくないと思ってしまい、つい守ってやりたいと手助けをしたくなります。

子どもがすべき決断、子どもが解決すべき問題、子どもが困っているときこそ、私たち大人が安易に簡単に解を与えずに、信じて待つことで、葛藤や困難に耐えながら、自ら解を見出すために、簡単に放り出さない、失敗してもあきらめないというこころの耐久力が育ちます。

ぶどうが常に子どもたちの中に育んできた勇気・やる気・元気という「ゆうやげ」の心を育むことは、困難や葛藤を乗り越えていく大事なエネルギーです。さらに青年ガイのようにどんな困難な状況にあっても希望を失わずに、仲間や世界のために何ができるのか・どうすればいいのかと自ら考えることで賢く生きるひとになっていくはずです。
私たち大人が信じて待つことで、先の見えない課題だらけのこの世界を生き抜くたくましさやしなやかさを備えた“自ら育つ”という自己成長のエンジンをこころに搭載した『シアワセな未来を創る』ひとに育っていくと信じています。

ぶどうの木Inc. 堀 晴久

 

保育テーマのあゆみ

 一人ひとりを大切に子ども主体の保育
          ―自ら希望を切り拓き、ひとと共生し、社会に貢献するひとになる―

★平成31年度 保育テーマ  子どもの意欲×大人の働きかけという相互のかかわりを軸に
おもしろがりをとことん!

子ども自らの意欲・好奇心・関心から創造性を引き出す!

★平成30年度 保育テーマ  子どもの興味・関心からどばどばと湧きあがる
 『おもしろがりをおもしろがる』

こどもが自ら観て聴いて感じる多様な経験を通して気づき・考え・学ぶ「私」になるために
共鳴する大人の存在が大切!

★平成29年度 保育テーマ  「みんなちがってみんないい」を起点にして
 『ごちゃまぜから バチバチ★ ドバドバ』     

子供たちの将来価値を見据えて、違いを包み込んで変化を面白がろう!

★平成28年度 保育テーマ  やってみよう!垣根を取り払い、混ぜ込めば、無限大の可能性

『ごちゃまぜからドバドバ』     
子どもひとり一人の生きる力を引き出すのは、しなやかにおもしろがるワクワク!


★平成27年度 保育テーマ  「しからない・せめない・まかせることで一人ひとりの子どもの自尊感情を育む」

そのために、『善く観る×善く聴く=共感と対話』を実践することを通してつねに自己の心を整え、ぶれないしなやかな“ひと”になろう!

★平成26年度 保育テーマ    「善く観る × 善く聴く = 共感と対話」 

子どもの成長の根と希望の種を育む“ひと”になろう!

★平成25年度 保育テーマ 『おもしろがるときめき×おもしろがるひらめきが響きあう』

かけがえのない今を生きる子どもたちとわくわくどきどきの未知の物語を創ろう!おもしろがることの積み重ねを通して、生きる喜びがわきます。
おもしろがることの経験を、昨日と今日を明日につなげていくことで、明日に対する期待が希望になります。
子どもを育てるとは、ひとり一人の子どものなかに生きる喜びと希望を育てることだと思います。そして、そこにはひとり一人のかけがえのない育ちの物語が生まれます。私たち保育者の仕事は、子どものなかにおもしろい物語を対話と共感を通して創ってくことです。そんな思いと願いを、平成25年の保育テーマに込めました。


★平成24年度 保育テーマ 『Being with』

-子どもがひとに“なる”を芽吹かせる保育を目指して-
子どもは保育者に受けとめられている子とも通じて、この人と一緒だと自分らしくいられる(being with)という感覚に近いものを感じる。そこから、自分らしくあることが認められている気持ちになり、「なる」へ自ら向かう力を生み出し、保育者の期待する「なる」の姿に通じていくのです。


★平成23年度 保育テーマ 『ひとり一人の子どものこころの中に宝を探す』

子どもは一人前の人間として自己選択でき、物事を理解し、自分はできるという自己肯定感を持つひととして生きたいと求めています。「今」の子どもたちの求めに適切に応えていくことで、子どもたちの現在が充実し、未来に向けてありたい姿を明確に描いていく力を育んでいってほしいと願っています。 

★平成22年度 保育テーマ 『喜びの保育の展開-子どもの「!」や「?」に応答しよう・引き出そう-』

瞳を輝かせた子どもの発信する「おもしろそう」「どうして」「なんでだろう」という「!」や「?」を受信し応答する関係の中で、子どもの豊かな心の躍動に寄り添うことはとても大切なこと

★平成21年度 保育テーマ 『喜びを分かち合うーJoy-Joyのかかわりあい』

子どもが喜んでいることを保育者自身も一緒に喜んで、お互いが喜びの感情でいっぱいになる、そんな喜びと喜びの関わりあう保育を大切に。人とより良いコミュニケーションを持続させ、親密な人間関係を築いて、幸せを実感できるように生きて欲しいと願っています 

★平成20年度 保育テーマ 『子どもたちが瞳を輝かせるような面白い保育の展開』

子どもたち一人ひとりが、自分で考え、自分で判断して、自分で問題解決できる。そして、自分で責任を持つことができる、そんなひとに育って欲しいと願っています

★平成19年度 保育テーマ 『こころを開く、聴く、伝える』

私たち大人が素直にこころを開き、子どもの気持ちをこころで聴き、こころを込めて愛情や気持ちを伝える。受信力と共感をみがきます

★平成18年度 保育テーマ 『かけがえのない一人を大切に』

性格・個性・発達など一人ひとりみんな違う かけがえのない子供たち

★平成17年度 保育テーマ 『肯定的ストロークは魔法の粉』

自分は自分でいいという自己肯定感は成長の力